古く雅な王国パロは、辺境の武の国モンゴールの奇襲を受ける。 あまりに突然の襲来に、 首都クリスタルは脆くも陥落し、 パロの国王と王妃を無残な最期を遂げた。 二粒の真珠と謳われた美しい王女リンダとその双子の弟である王子レムスは両親の死を目の当たりにし、 そして、迫り来るモンゴール軍の魔手を前に為す術もなかった。 だが、クリスタル公アルド・ナリスの奮闘、リヤ大臣の必死の助けにより、幼きふたりは行く先も知らずに走りはじめる。 そして、王宮の奥深くに眠る古代機械を使い、 王太子と王女はパロを逃れるのであった。 両親を失った二粒の真珠に悲しむ時間は与えられなかった。 澄んだ瞳に映ったのは、敵国モンゴールの地。 真綿にくるまれて育った麗しい雛鳥たちは深い闇、 血と腐臭が支配する暗黒世界へ生贄も同然に投げ込まれたのであった。 恐ろしきは腹を空かせた死霊の群れ、毒矢を放つ見知らぬ部族の叫び、 禍々しい甲冑に身を包んだモンゴール軍騎士の軍靴の響き・・・・・・。 しかし、もっとも驚嘆すべき怪異はこのどれとも似てはいなかった。 途方もない体躯、超人的な怪力、 そして、 首から上に据えられた巨大な豹の頭。 鋭く尖った牙の奥から、 豹人は怯えるふたりにいう。 「グイン」 と。